コーチングが変えるチームマネジメントの未来
現代のビジネス環境は絶え間ない変化を要求しており、チームマネジメントの手法もこれに適応する形で進化しています。私は改めて「コーチング」がこの変化に非常に有効だと感じています。
特に、コーチングと聞くと1on1をイメージする場合が多いとも思いますが、チーム全体に働きかけるチームコーチングの重要性が高まっています。チームコーチングは欧米では10年以上も前から注目されている一方で、日本においてはまだあまり市民権が得られていないように感じます。今回は1on1のコーチング対比させながらチームコーチングの意義や効果などに迫っていきたいと思います。
ちなみに国際コーチング連盟(ICF)は「チームコーチング」を次のように定義しています。
「チームが共通の目的と共有されたゴールに到達するために、共創的で内省的なプロセスを通じて、チームの能力と可能性を最大化させるように、ダイナミズムと関係性の上で成り立つチームとしてのパートナー関係を築くこと」
ポイントになるのは共通の目的、共有されたゴールにチーム一丸となって向かっていくために、チーム内のパートナー関係を築くことに焦点を当てている点ですね。コーチングというと個人の目標達成に向けた気づきや行動を促す部分にフォーカスされますが、チームコーチングは人との関係構築により重きが置かれている点がポイントです。
コーチングの進化:1対1からチームへ
プロコーチであり会社をマネジメントしている身として思うのは
従来の1対1のコーチングが主流であった時代から、現在ではチームコーチングが求められる場面が増えているという実感です。
これは、複雑で多様な問題に対処するために、個に働きかけたとしても影響は限定的で、やはり組織、集団全体の力を引き出す必要があるからです。
まさにチームコーチングは、この集団全体の力にアプローチできるポテンシャルを持っています。
チームコーチングの有効性
チームコーチングの意義について理解を深めていきましょう。言うまでもなく、チームコーチングはチームに働きかけていくので個々の能力向上だけでなく、チームとしての一体感を高めることやパートナー関係を築くことに主眼を置いています。
異なる年齡、経歴を持つメンバーが集まっていますので、確立されたビジョンと共通の目標さえ準備すればあとはそれぞれが一意専心して突き進み、パフォーマンスは常に安泰かというとそんなはずはありません。
そこには無数の人間関係が存在し、一度こじれることがあれば本来期待されるパフォーマンスの半分も発揮できないこともしばしば。
やはりお互いを尊重し、協調を前提としたプロセスは、チームの成功に不可欠です。まさにチームコーチングはここに力点を置いています。
たとえば私がコーチとして関わる場合は、個人ではなくチームを「1つのクライアント」として関わっていきます。
まずはチームメンバーに本音を語っていただくために、様々な角度からメンバー全体に問いかけを行い、どんな発言でも受け入れてもらえるという心理的な抵抗を取り除く時間を十分に確保していきます。
「どうせ受け入れてもらえない」「○○さんとの関係が悪くなったらどうしよう」。そんな不安や恐れがあれば最高のパフォーマンスを出すことは極めて難しいでしょう。
ここがまさにコーチとして成長の伸びしろだと考えています。
「関係性の質が、結果の質に影響を与える」
マサチューセッツ工科大学元教授のダニエルキム博士の研究により、組織の成功を循環させるために必要な要素は「関係性の質」にあると語っている通り、チームコーチングが人間関係にフォーカスしている点は非常に理にかなっています。
「関係性の質」を高めると、チームの「心理的安全性」も高まります。心理的安全性が高まると、生産性の向上、意義ある対立、失敗の緩和、イノベーションの推進などの効果があることがわかっています。チームコーチングを通して「関係性の質」に働きかけ、信頼を高め、長期・継続的に望ましい結果を作り出せるチーム・組織の文化を作っていくことが可能なのです。
結論
変化の激しいビジネスの世界では、効果的、効率的な成長が常に求められています。そんな中で1on1のコーチングで得られる効果も重要である一方で、チームとしての成功を追求することでよりダイナミックな成長を実現していく必要性が高まっているのも事実です。チームコーチングは、このような成功を実現するための重要なツールです。メンバー間の結束を深め、全員が共同で目標に向かって努力できる環境を整えることがコーチとして活動する私の大切な役割だと思っています。
この記事を通じて、コーチング対する理解が深まり、読者の皆様が自身のチームや組織での実践に役立つことを願っています。